少し前にクマ探し活動に復帰したばかりなのだが、不思議なもので直後にクマと疑われる動物の目撃情報が2つ入って来た。4月下旬のことだ。
公表が少し遅れたが、これは当事者への聞き取りに多少手間取ったことと、クマかどうかに着いて決め手に欠いたこと、そして大型連休中の行楽や登山(特に各地で開催された山開き)に悪影響(風評被害)がでるとまずいと判断しての事で、役場や警察などの関係機関には先月下旬に第一報を入れてあった。
今回は地元のベテラン猟師の証言が含まれている点が貴重だ。さらに1件は一時的に捕獲したというのだからすごい。僕もクマ探しを始めて10年9年(6/1訂正)になるが、こんな話は初めてだ。
結局、2件ともクマとは断定できない。ただ、特徴などがクマのそれと一致するし、他に思い当たる動物もないため、やはりクマだった可能性がある、という判断をしている。
何か関連するような情報をお持ちの方は、栗原までご一報を(メール tomo.kurihara@nifty.com)
以下、本日一般に(特にマスコミに向けて)公表した報告文の内容(抜粋)。ただし、目撃者らの氏名などは念のため仮名にしてある。
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情報1(一時的な捕獲)
当事者
A氏 高千穂町岩戸(土呂久 惣見) 農業 60代 男性
狩猟は銃猟も含めて30年以上のベテラン。
B氏 高千穂町岩戸(土呂久 惣見) 農業 80代 男性
現場の直近に在住。
日時
2009年(平成21年)1月15日
(罠は毎日点検しており、前日の点検では変わった様子はなかった)
場所
高千穂町岩戸の土呂久集落のはずれにある山林
竹林とスギ林の境界に設置された箱罠
状況
B氏が朝(7時半から8時ごろ)、いつものようにA氏の箱罠(B氏宅から100mほど山林に入ったところ。高さ約90cm×幅約90cm×奥行き約185cm。格子は約8×約21cm。イノシシ用。エサは米ヌカ)を見に行くと、黒い獣がかかっていた。知らせを受けた猟の途中のA氏も一緒に再び罠を見に行くと、中に真っ黒な獣がうずくまっていた。毛づやがよかった(両氏)。 アナグマかとも思ったが、それにしては大きかった(B氏)。 見た事の無い獣(A氏)だった。顔の付近に白い所が見えた(A氏)。印象では体重30-40kgくらい(A氏)。首を上げないまま顔を少し横に振り、ジロリとこちらを見た(両氏)。 体を丸め込んでいたので四肢や尾の形状などは不明。
他の猟師を呼ぼうと自宅に戻っている間に、たまたまやって来たC氏が促されて箱罠を見に行ったが、すでに獣の姿はなかった(獣から目を離した時間…A氏「10分くらい」、B氏「20-30分」)。付近には他に人はいなかった。箱罠が倒れたり壊れたりはしていなかった。
B氏宅から罠までは50-100mくらい。間にはスギ林や竹林があり見通しは悪い。かかった獣がよほど大暴れすればB氏宅からでも物音が聞こえるが、扉が落ちたくらいでは分からない。
箱罠の周囲には手を伸して土を引っ掻いたような後が地面に残っていた(写真あり)。
箱罠にかかった獣が自力で脱出した、という経験はない。
あとから「もしかしたらクマだったのか?」という話になった。
栗原による所見
地元のベテラン猟師が至近距離で見た上で「見た事の無い獣」と語っている、非常に貴重な証言である。反面、そのような好条件ながら、丸くうずくまった姿しかみておらず、情報が限られているのが残念である。
罠にかかったはずの動物の姿が消えた、というのが不思議である。 箱罠の落とし扉にはロックがかかっており簡単には出られないはずだ。
まず、誰かが獣を放すためにロックを外した可能性を考えた。当事者らに関してはクマ禁猟に抵触することやタタリの伝説などを心配した、などの動機が考えられるものの、実際にふたりに別々会って話を聞いた印象では、この二人にそのような行為があった(嘘をついている)とは考えにくかった(もしそうなら、最初からこの話を秘密にすればよい)。また他に人がいたとしても、他人の罠にかかっている動物をわざわざ放すだけの理由が見つからない。
証言が正しいとすれば、動物が自力でロックを外し扉を開けて脱出した可能性が高い。ロックは高さ90cmの天井部分に乗っている鉄棒を少し持ち上げるだけで外れるが、同時に扉を少し持ち上げなくては開かない。このため、両前足などを使って鉄棒と扉を同時に持ち上げるような動きをする必要があると思われる。このような動作を野生動物で考えると、可能性は限られてくる。
なお、扉は大人の男性なら片手で持ち上げられる程度の重量なので、ロックが外れてしまえば、少し開いた扉の下に顔を突っ込んで扉を押し上げながら外に出る事は可能だったろう。
上記のような行動に加え、黒い姿、ベテラン猟師に判別が出来なかったなどの証言から、クマだった可能性はあると判断した。
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情報2(目撃)
当事者
C氏 高千穂町岩戸(土呂久 畑中) 農業 60代 男性
狩猟の経験は無い。シカ、イノシシなどはよく見る。カモシカも何度も見た事がある。
日時
2009(平成21)年4月20日 午前10時ごろ 天候は曇り
場所
高千穂町岩戸の土呂久集落の東側。黒葛原(つづら)越えの近く。幅4.5メートルほどの舗装された林道(道元越線)の路上。標高約800m。
前述の「一時的な捕獲」の現場からは東に約800mの距離。
目撃状況
日課として軽トラの荷台に犬を載せ林道へ来ている。犬の運動のため、途中で犬を放し自由に走らせながら、1.2キロほど先(今回の目撃現場)で犬を再び荷台に載せて帰る。
この日、車を止め外に出て、放した犬が来るのを待っている時、道路山側の崖の上の方でガサガサと物音がした。犬はまだ来ていなかった。何だろうと見ていたら、山の崖を黒くて大きな獣が駆け下りて来て道路を横断し谷側の小さな土手を越えて下の林に消えた。目撃者との距離は約70-80メートル。
動物の姿を左斜め後方から見た。全身真っ黒で、体つきは丸く、首は短く、シッポは見えなかった。シカなどと違い、「ノッシノッシ」という感じの走り方だった。30-40貫(1貫は3.75kg)あると思った。
直後に動物が越えた土手を見た。土を踏んだ跡はあったが、ヒヅメの跡はなかった。
直後に追いついて来た犬は、普段シカやイノシシなら追って行く(猟犬ではないため、深追いはしない)のに、匂いを気にしながらも動物の後を追う様子は無かった。
現場状況
現場となった林道は幅4.5メートルほどある広い農道で、当時の目撃者と動物の間(約70メートル)は勾配の無いほぼ平坦な区間、わずかなカーブがあるものの直線で見通せる。遮蔽物などは一切なし。道を覆うような木は無く、日中は十分明るい。
動物が駆け下りて来たとされる崖には、複数の獣道(おそらくシカを中心に利用されているもの)が確認できた。
栗原による所見
今回の目撃者は、現場付近の村の地元住人である。狩猟の経験は無いが、普段からシカ、イノシシに出会う事は珍しくなく、ニホンカモシカも何度も見ているという。この一帯に普通に生息する中大型獣を見間違える可能性は、他県からの登山者などに比べるとかなり低いと思われる。
また目撃時の状況も、本人は車から降りた状態で、物音に気づいて注視していた時のことであり、明るさや見通しの点でも条件は良く、一瞬の出来事でやや遠かったとは言え、しっかりと目視できる状況であったことろうと、考えられる。
また一貫して「クマ」とは断定せず、「(見た事のない動物なので)あれがクマなのかも。」という表現をしている。これは目撃者が非常に冷静かつ客観的な観察と判断を行っていることの現れであると言える。
以上を踏まえて目撃者の証言内容を見ると、カモシカなどの誤認の可能性は低いと言わざるを得ない。
一方で、正面や真横からの姿を見ていない、立ち上がるなどの独特の行動を見ていないなど、この動物をクマと結論づけるには、 情報が不足している。ただ、クマであったとして矛盾する内容は、証言の中にはない。以上を総合し、やはりクマであった可能性があると判断した。
なお、「30-40貫」という大きさは112.5~150kgに相当し、もしツキノワグマであったなら、かなりの大物ということになる。ただし、こうした突発的な目撃ではしばしば実際よりかなり大きく感じてしまうものなので、実際にはずっと小さい動物であったろうと推測する。
関連情報
2001年4月1日夜、土呂久集落から西に1km ほどの林道で、登山客がクマらしき動物に遭遇する出来事があった。(各紙報道)
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